米中露が開発する次世代ステルス戦略爆撃機

米中露が開発する次世代ステルス戦略爆撃機

戦略爆撃機は長い航続距離を活かし、安全空域から遠く離れた相手の領空に潜入、重要拠点を爆撃するための戦略兵器です。ペイロード能力が高く、多くの爆弾に核爆弾・核ミサイルをも搭載できる最強の兵器です。現在、戦略爆撃機を保有するのは米国、中国、ロシアと大国のみになっています。しかし、戦略爆撃機の多くは1950年代から冷戦期にかけて開発されたもので、現在は長距離移動できたとしても制空権を確保できていない空域に潜入する能力は無く、本来の目的を果たすことはできません。そこで、三カ国は敵のレーダーに検知しにくい、次世代ステルス戦略爆撃機の開発を進めています。各国が開発を進める三機を紹介します。

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B-21 レイダース [米国]

B-21 レイダース
Photo northrop grumman

ノースロップ・グラマン社によって開発されているステルス戦略爆撃機です。形状は現在、米空軍が運用しているB-2(写真下)と同じブーメランのような形状のフライングウィングレイアウトを採用しています。この設計はステルス性能と耐荷重性に優れ、内部空間を広くとれ、燃料や爆弾の搭載量を増やすことができます。B-21はB-2よりも小型化される予定で、ステルス性や機動力は向上しますがペイロード能力は約半分の13トン前後になり、爆弾の積載量は減ります。B-2では製造、運用コストが課題で132機の製造予定が1997年に運用が始まって以降、21機しか生産されていません。B-21ではこのコスト負担を削減し、一機当たりの調達額をB-2の約3分の1に抑え、計100機の調達を計画。米空軍は最終的には174機が必要と見積もっています。現在、米空軍では1950年代に運用が始まったB-52、1986年のB-1、そして、1997年のB-2の三機の戦略爆撃機を運用しています。B-1とB-2は2030年代に退役を予定しており、B-21に置き換わります。B-52はエンジン改修を行い2050年まで運用予定です。米空軍は最低175機の爆撃機を必要と算段しており、2030年代以降はB-21とB-52によって編成されます。B-21は2022年に初飛行を予定しており、現在、5機のプロトタイプが生産されています。

B-2
Photo US Air Force

H-20 [中国]

中国軍のH-20ステルス爆撃機は1.3万キロの航続距離を持ちハワイを往復できます

アメリカのB-21に対抗すべく中国で開発されているのが、西安飛機工業公司が開発する「H-20」です。 B-21と同じフライングウィングレイアウトを採用した中国初のステルス爆撃機です。中国人民解放空軍の爆撃機は1950年代に開発されたソ連のTu-16 爆撃機を国産化したH-6(写真下)を近代化改修を繰り返しながら半世紀以上に渡って運用していますが、H-20はこれを大幅に上回る機体になります。航続距離は最大1.3万kmになり、日本全域はもちろんのこと、グアム、ハワイを往復できる距離になります。最大積載量は45トンで、核弾頭や現在開発中の超音速弾道ミサイルも搭載できます。長距離弾道ミサイルを搭載すれば、その戦闘半径距離は5,000kmにもなり、往復を加味してもアメリカの東海岸を攻撃して帰還することが可能です。燃料の最大搭載量は100トン、最大離陸重量180~200トンとされ、航続距離と戦闘半径はH-6の倍になり、攻撃能力は5倍です。現在公表されている能力だけから比較するとB-21を凌ぐ能力があります。2016年に5年以内に就役させると発表していますが、当初の予定よりは遅れているようです。H-20はH-6の後継機ではなく、H-20登場後もH-6と合わせて併用されます。

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中国軍のH-20ステルス爆撃機は1.3万キロの航続距離を持ちハワイを往復できます
H-6
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PAK-DA(パクダ) [ロシア]

PAK DA|ロシアの最新ステルス戦略爆撃機

ロシアは冷戦時、米国と競うようにTu-95、Tu-22、Tu-160などを開発しました。これらはまだ現役ですが、ロシアはこの旧式の戦略爆撃を10年後に全て新しい爆撃機に置き換える予定で、それが現在、ツポレフ社が開発中の戦略爆撃機PAKA-DAになります。ロシア初のステルス爆撃機になり、形状はB-21、H-20同様、フライングウィングレイアウトになります。 航続距離は1.5万kmと長く、数字上はロシア本土からワシントンを往復できます。最大離陸重量は130トンとされ、これは現行の爆撃機Tu-160の約半分になり、軽い分、離陸距離が短く、離着陸できる空港が多いことを意味しています。だが、最高時速1190km/h、これまでの爆撃機と比べると鈍足になっています。ペイロードは30~40トンで、基本的にはTu-160と同じ武装が搭載されるとされており、長距離巡航ミサイルのKh-55SM、Kh-102。さらにマッハ10を誇る超音速ミサイルKh-47M2 Kinzhalが搭載されることになり、戦略爆撃機の高高度から撃たれると迎撃はほぼ不可能とされています。2021~2022年での完成、テスト飛行を予定しており、配備は2027~2029年頃を予定しています。

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