プーチン大統領、テロ組織タリバンを「我々の同盟者」と発言

ロシアのプーチン大統領は4日木曜、アフガニスタンで実権を握るイスラム原理主義組織タリバンをテロとの戦いにおけるロシアの「同盟者」であると述べた。

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ロシアは2003年からタリバンをテロ組織と認定しており、国内での活動を禁止している。しかし、今年4月、ロシアメディアは外務省と法務省がタリバンのテロ組織指定の解除を検討していると報じた。また、ラブロフ外相は今年5月、タリバンをアフガニスタンの政権と述べた。そして、プーチン大統領は先月、クレムリンに対しタリバン政権との関係を”構築”するよう求めた。「我々はタリバンがアフガニスタンの権力を握っていると想定しなければならない。そしてこの意味でタリバンは当然、テロとの戦いにおける我々の同盟者である。なぜなら、いかなる権力者も自らが統治する国家の安定に関心を持っているからだ」とプーチン大統領は語っている。タリバンは米軍が撤退した2021年にアフガニスタンの実権を掌握。政権を樹立しているが、現状、タリバンが支配するアフガニスタンは国として認めておらず、国家承認している国は存在しない。ただ、中国がタリバン政権樹立後に駐アフガニスタン大使を任命するなど、国家承認に近い対応をとっており、ロシアもそれに近しい行動をとってくるかもしれない。

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ロシア・タリバンの共通の敵ホラサン

タリバンは近年、アフガニスタン国内で敵対するジハード主義組織「イスラム国ホラサン(IS-K)」と戦ってきた。そのホラサンの戦闘員が行ったとされるのが、今年3月にモスクワのコンサートホールで起きたテロだ。140人以上が死亡し、過去20年でロシア最悪のテロ攻撃となった。アメリカ政府はホラサンによるロシアへの攻撃は南アジアを越えて勢力を拡大する能力を誇示するための他、モスクワとタリバンが関係を深めている点、そしてシリアにおいてアサド政権を支持し、イスラム国に対する攻撃が続いているためだと分析している。

イスラム国ホラサンとはその名の通り、かつて一大勢力を誇ったイスラム国(ISIL)の支部・下部組織の一つで2015年に創設された比較的新しいイスラム過激派組織。本体のISILが弱体化した今、最も過激で暴力的な武装組織と言われており、アフガニスタン東部パキスタンとの国境ナンガルハール州に拠点を構えている。タリバンとホラサンは同じイスラム原理主義の過激派組織だが、ホラサンはよりイスラム原理主義思想が強い、いわゆる”超過激派”で、タリバンは”過激派”だ。タリバンの政策はまだ緩いと考えており、敵対している。つまり、ホラサンはロシアとタリバンにとって共通の敵になるわけだ。

ウクライナで戦争する今のロシアにホラサンに構っている余裕はない。そこで、タリバンとの関係を強固にしようと考えているのだろう。とはいえ、ソ連時代にアフガニスタン侵攻するなど、かつては敵対関係だったロシアとアフガニスタン。またロシアは1990年代と2000年代にイスラム教徒がほとんど占めるチェチェンに侵攻、その際、ロシア軍は残虐の限りを尽くしたとされている。そして、今でもロシア国内でイスラム教徒に対する弾圧疑惑がある。ただ、タリバンとしても国際的な承認を得る事ができていないなか、中国に続き、大国ロシアの承認を得たいところだろう。5月にロシアで開かれた国際経済フォーラムにロシアから招待され、タリバン代表団が出席している。

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北朝鮮では使わなかった同盟

ロシアがタリバンとどのような関係構築を狙っているのかは分からないが、注視すべき点はプーチン氏が「同盟」という言葉使った点だ。6月にプーチン大統領が北朝鮮を訪問し、金正恩総書記と首脳会談を行い、有事の際の相互軍事支援を規定した準軍事同盟と言ってもよい「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。金正恩氏はこれを同盟関係と言ったが、プーチン氏はその後の国内での記者会見で同盟という表現を使用しなかった。

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