先週、シリア内戦にてアサド政権率いるシリア軍のT-72戦車にトルコが支援する反政府軍のACV-15装甲車が突撃する映像がドローンによって撮影された。戦車が有利と思われるこのバトルだが、勝ったのは装甲車の方だった。
戦車に突っ込む装甲車
Direct confrontation between rebel armor (green) and regime tank (red) near Nayrab pic.twitter.com/ioKiikpoLd
— Abdurrahman (@Abdurahmanhrk) February 22, 2020
ドローンが空撮した映像には荒れ地の中を進む一台の戦車が見える。これはシリア軍のT-72戦車(写真下)になる。1971年に開発されたソ連製の古い戦車にはなるが、優れた打撃力と分厚い装甲を持つ戦車になりロシアをはじめ、今でも多くの国で現役で活躍する戦車になる。
映像を見る限り、近くに人影は見えたが、戦車一台のみの単独行動のようで、前方にある建物に対して砲撃を行っている。すると、左上から装甲車が猛スピードで迫ってくるのが見える。これは反政府軍の装甲車になり、トルコ製のACV-15(写真下)になる。この装甲歩兵戦闘車(AIFV)は米国のM113A1装甲兵員輸送車をベースに開発したものだ。
戦車と装甲車では圧倒的に装甲車の分が悪く、T-72の125mm滑腔砲をくらえばひとたまりもない。しかし、そんなことお構いなしにACV-15は最大時速65㎞/hのスピードでT-72に向かって進んでいく。「気づかれたら最後! 」と思うがT-72の砲塔は一向にACV-15を向く気配がない。ここで別の角度からの映像がある。
Another footage of the rebel ACV-15 encounter against regime T-72 near Idlib’s Nayrab on 20 Feb 2020 pic.twitter.com/GM9ck9lN3S
— Abdurrahman (@Abdurahmanhrk) February 24, 2020
周りにあった木は戦車よりも背が高く視界を遮ったいたようで、T-72が気づいた時には既に砲塔を旋回する余裕がない距離まで近づいており、 ACV-15は側面に回り込もうとする。T-72側も車体を旋回するも機動力となれば戦車よりも装甲車の上で、T-72は後ろを取られてしまう。
戦車はハッチを閉めていた
しかし、なぜ、あの距離に至るまで戦車は気づかなかったのか?映像を見る限りは砲塔のハッチは空いていなかった。そうなると視界は車内からの小さな小窓から覗くしかなくなり、視野は極端に狭まる。また、エンジン音もうるさく、外の音も気づかない。打撃、装甲も強力な戦車だが、このような弱点もあり、普通は単独行動はしない。歩兵や機動車両と編隊を組んだり、航空支援で周囲の情報を受け取ったりするものだ。今であれば、この映像が撮影されていたようにドローンを飛ばすという手段もある。しかし、今回、このシリア軍のT-72は完全な単独行動だったようで弱点を露呈してしまった。 反政府軍はその弱点を突いたわけだが、 ACV-15の搭載兵器は25㎜キャノンになり、それではT-72の装甲を破ることはできない。そのためかT-72の後方に体当たりをし、何かしらの損害を与えようとしたと考えられる。T-72はその後、後部から白煙を吹いている。
T-72の装甲は200㎜と分厚いが弾頭と装薬が車内でむき出しになっており、一度誘爆するとひとたまりもなく、多くのT-72がシリア内戦では破壊されている。
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