英軍には王立海軍、王立空軍があるのに、なぜ、王立陸軍はない?

英軍には王立海軍、王立空軍があるのに、王立陸軍はありません
Photo by British Army

イギリス軍の海軍は王立海軍、空軍は王立空軍という名なのに、実は陸軍だけ王立陸軍とは呼びません。なぜ?陸軍だけ”王立”がないのでしょう?

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陸軍には”Royal”がつかない

勘違いしないので欲しいのは、英軍には歴とした正規の陸軍はあります。しかし、海軍が王立海軍(Royal Navy)、空軍が王立空軍(Royal Air Force)と名前なのに対し、陸軍には王立が付かず、イギリス陸軍(British Army)なのです。海軍管理下の海兵隊でさえ、王立海兵隊(Royal Marines)と名です。イギリス軍に入隊するには、王室への忠誠の誓いを誓わなければならないのに、なぜ?陸軍には王立の”Royal”が付かないのでしょう。

歴史が関係

イングランド内戦

これには歴史が大きく関係します。1642年に始まったイングランド内戦。チャールズ1世率いる王党派の王立軍と議会派の議会軍の間で起こったこの内戦は9年間の戦いの末、議会派が勝利。敗れたチャールズ1世はギロチンに掛けられ処刑された末、君主制は廃止され共和制のイングランド共和国が樹立。議会軍がその後の軍の主力になります。しかし、イングランド共和国は1660年に解散、チャールズ2世が復位し、君主制に戻り、軍は共和国から引き継がれます。チャールズ2世は最高司令官になりますが、父であり、王を殺した部隊に王立”Royal”という称号を与えることはしませんでした。

現在の歩兵連隊の中にこの時の軍にルーツをもつ部隊も多く、そのため王立はつきません。

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陸軍は常備軍ではない

王立海軍と王立空軍は常備軍ですが、陸軍は建前上、実は常備軍ではなく、戦時中に徴兵される部隊になります。中世時代に常備の王室配下の陸軍は無く、戦争が始まれば各地の領主が兵を集め、君主の元に集い、王の為に戦いました。つまり、各部隊は王室ではなく、各領主によって育てられ、地域ごとにバラバラのルーツを持っています。また、名誉革命後の1689年に英国議会で可決された「権利章典」によって、王室は平時に軍隊を常備、統治することを禁止されます。編成するには議会の承認が必要です。これは、現在でもそうで、陸軍は実は建前上、常備軍ではありません。ただ、実際は平時でも編成されており常備軍ですが、存続のため、議会は5年ごとに英国陸軍の存在を更新しなければなりません。

それに対し、王立海軍は創設時から常備軍であり、単一の組織で王室の資金によって運営されてきました。王立空軍は三軍の中でも最も歴史が浅く1917年に創設されます。ベースにあるのは1912年に設立された陸軍航空隊と1914年に設立された海軍航空隊になり、2つの部隊が統合して1918年に空軍が発足します。両部隊、空軍は共に王室の承認を経て創設された王立部隊・軍です。海軍と空軍は陸軍とは違い、その存在は恒久的に保証されています。

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陸軍内には個別に王立部隊がある

戦車連隊
Photo by British Army

陸軍には王立は付きませんが、個別の連隊によって王立が付けられています。それは以前から王室に仕えてきた部隊や、王室の承認よって設立した部隊などです。特に近代史以降に創設された部隊がそうであり、戦車連隊などは戦車が登場した第一次大戦時に創設された比較的新しい部隊であり、王室が承認して創設されたので「王立戦車連隊」という名が付いています。

これはイギリスだけではなく、カナダ軍やオーストラリア軍といった他のイギリス連邦の国々でも陸軍のみ王立が付きません。

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Source
https://www.forces.net/heritage/history/why-it-british-army-and-not-royal-army
https://www.theguardian.com/notesandqueries/query/0,5753,-1514,00.html

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