海軍力に乏しいウクライナ軍は小型の無人ボートからなる世界初の無人艇艦隊の創設を計画しており、無人艇(USV)の手配の為に資金調達キャンペーンを開始しました。
ウクライナのものと思われる無人水上艇(USV)がクリミア半島のセヴァストポリ港に停泊するロシア海軍黒海艦隊の2隻の艦船を攻撃、USV目線の攻撃時の映像が公開された。[adcode]10月29日の朝、クリミア半島のセ[…]
10月29日にクリミア半島のセヴァストポリに停泊するロシア黒海艦隊の新しい旗艦であるフリゲート艦のアドミラル・マカロフ。そして、掃海艇のイヴァン・ゴルベッツを含む3隻の艦船が攻撃を受けて損傷します。この攻撃はウクライナ側の無人の小型高速ボートによる自爆攻撃になり、その様子の一部始終を撮影したボート目線の映像も公開されました。ウクライナ国防省は直接的な関与は示していませんが、ウクライナ軍の攻撃なのは明らかです。
この攻撃によって、一定の成果を確認したウクライナ海軍はこの無人艇、いわゆるUSVから成る無人艇のみの世界初の艦隊の創設を計画。そして、ゼレンスキー大統領の指令のもと、艦隊創設が決定します。
Ukraine is creating the world's first Fleet of Naval Drones — so, we are launching our biggest fundraiser yet🔥It will protect the🇺🇦waters, prevent cities from being struck by missiles, and also help unlock corridors for civilian ships that transport grain. #FleetOfNavalDrones pic.twitter.com/9V07vqZXkl
— U24 (@U24_gov_ua) November 11, 2022
黒海艦隊の攻撃に使用されたこのUSVは全長5.5m、重量1000kgと小型で最高速度は80km/h、遠隔操作は400km、最大航行距離800Km、最大60時間航行できます。船には自動操縦機能、ナイトビジョンを含む3つのビデオ サブシステム、バックアップ通信モジュール、遠隔操作、誘導のためのアンテナを搭載。偵察任務はもちろんのこと、黒海艦隊を攻撃したように最大200kgの爆薬を積んで突っ込む自爆ドローンとしても利用できます。
そんなUSVのコストは1隻あたり25万ドル、日本円で3500万円ほどです。対艦ミサイルのハープーンが1発150万ドルなので、対艦兵器として考えれば格安です。ウクライナ海軍は艦隊創設のために100隻ものUSVを必要としています。このUSVの生産元は不明ですがNATOからの支援リストにある兵器ではなく、別途、購入のために2500万ドル相当、35億円規模の多額の資金が必要です。今のウクライナに余裕はもちろんなく、ウクライナ海軍は購入資金調達のため、ウクライナへの支援金を募るUnited24プログラム内で11日から資金の募集を開始します。ゼレンスキー大統領も募金を呼びかける動画を公開しています。USVはウクライナの水域を守り、都市がミサイルに攻撃されるのを防ぎ、ロシアによる穀物輸送の民間船の回廊の封鎖を解除することに役立つと述べています。募金開始から翌日12日には既に12隻分の資金が集まったことを公表しています。
もともと海軍力が乏しかったウクライナ海軍ですが、主要な大型・中型艦は破壊、自沈、鹵獲されるなどして80%以上の戦力を喪失しています。黒海に繋がるボスポラス海峡はトルコによって軍艦の通過が禁止されているため、艦船の支援を受けることはできません。新たに造ろうにも中型・大型船の建造には通常数年かかります。その上、目立つ造船所は標的にされる可能性があります。
その点、全長3.6mの小型の高速ボートは造船所で生産する必要がなく、トラック輸送ができるので内陸部の工場どこでも生産ができ、生産拠点や配置場所がバレません。生産のリロードタイムも短く大量生産が可能です。そもそも現代戦において、必ずしも大型船相手に大型船が必要ではなく、且つ黒海という限られた水域であればなおさらで、それはウクライナ軍がこれまでの戦いで証明しています。
ロシア黒海艦隊は10月の無人船による攻撃以降、次の攻撃を恐れてか、活動がおとなしくなっており、クリミア半島のセヴァストポリ港から離れていないことが分かっています。USVが大量配備されれば、ロシア黒海艦隊の警戒はより強くなり、抑止力としても効果を発揮するでしょう。