ロシア国営メディアのTASS通信は世界最長の狙撃記録4210mを持つ、トワイライトこと「SVLK‐14S」がウクライナで初めて実戦投入されたと報道しました。法執行機関からの情報によれば、ウクライナ北部のハリキウ周辺に展開している狙撃兵によって使用されているようです。
世界記録を達成したスナイパーライフル
SVLK‐14Sはロシアの銃器メーカーLobaev Arms(ロバエフ・アームズ)社によって2012年に開発された狙撃銃になります。ロバエフ・アームズは日本ではあまり聞きませんが、ボルトアクション式ライフル、狙撃銃のメーカーとして評価が高く、同社のスナイパーライフルは世界最高水準と評価されており、ロシア軍特殊部隊スペツナズでも使用されています。
SVLK‐14Sが有名になったのは2017年に狙撃の最長記録を更新したことによります。公開されている有効射程は2500mですが、非戦闘環境下の競技会のようなシチュエーションで行われたテストでSVLK‐14Sは4,210m先の静止した標的に当てることに成功。これまでの狙撃の世界記録は2017年5月のイラクにてカナダ軍特殊作戦司令部傘下の特殊部隊JTF-2所属のスナイパーがTAC-50によって達成した3,540mになり、これを大きく更新。「世界で最も優れた狙撃銃」として称賛されます。弾丸の初速は900m/s(マッハ3)程度なり、3,540m先の的に弾着するまで13秒かかります。高合金ステンレスと航空機グレードのアルミニウム作られたボディは剛性がありながら9.6kgとこの手の狙撃銃としては軽量化されています。
狙撃銃のフェラーリ
しかし、今回、初めて実戦に投入されたという情報から分かるように、発売後から長らく、この銃がロシア軍や法執行機関に配備されたという情報はありませんでした。なぜ、これほど高性能の狙撃銃が配備されなかったのでしょうか。その理由の一つに考えられるのが価格です。SVLK‐14Sの価格は3万ドル(400万円)以上とTAC-50の1万ドルの3倍。銃としては非常に高価で、「狙撃銃のフェラーリ」とも呼ばれました。その上、大量生産は難しく軍事用には向いていませんでした。
このタイミングでSVLK‐14Sが始めて実戦に投入されたのは使える銃器が少なくなってきたのか、それともロバエフ・アームズからの提供なのか、その経緯は不明です。