5.56㎜弾と呼ばれる「5.56x45mm NATO弾」、7.62㎜弾と呼ばれる「7.62x51mm NATO弾」。小銃・機関銃に使われる弾丸としては一番メジャーになり、自衛隊、米軍、NATO軍など西側の多くの軍の主力銃火器の弾丸として採用されている。どちらもあらゆる状況に対応できる優れた弾丸になる。今回はこの2つの弾丸について比較してみた。
5.56x45mm NATO弾
5.56㎜弾は、北大西洋条約機構 (NATO) により標準化された小火器用の弾丸になる。登場したのは1960年代になり、1963年に22口径の5.56㎜弾を使うM-16(AR-15)がアメリカで登場し、米軍の主力小銃して採用されると、同盟国であるNATO軍との弾薬共通化を図る上で1980年代に標準弾薬として採用される。これは自衛隊においても同様になる。現在、多くのアサルトライフルが5.56㎜弾仕様になっている。
7.62x51mm NATO弾
7.62㎜弾も同じくNATOの標準弾薬になるが、5.56㎜弾よりも先に誕生、採用されている。大戦中のライフル弾は同じ30口径の7.62×63㎜弾などを使用していた。戦後に登場したソ連のAK-47が7.62×39㎜弾を使用するなど7.62㎜弾は戦後も主流だった。1950年代になるとヨーロッパでは7.62×51㎜弾を使用するFN FALが誕生、人気となる。米軍の戦後初の主力小銃M14も同じ7.62㎜弾を採用するとNATO軍の標準弾薬しても7.62×51㎜弾が採用されることになる。しかし、5.56㎜弾が登場すると、80年代から90年代にかけて小銃の標準弾丸は5.56㎜弾に移行し、7.62㎜弾は主に機関銃やスナイパーライフル用の弾丸して使われることになる。
5.56㎜弾と7.62㎜弾の比較
5.56x45mm(写真中央) | 7.62x51mm(写真左) | |
約4g | 弾頭重量 | 約10g |
12.3g | 弾丸総重量 | 25.4g |
5.69㎜ | 弾丸径 | 7.82㎜ |
6.43㎜ | 首径 | 8.77㎜ |
9.00㎜ | 肩径 | 11.53㎜ |
9.58㎜ | 底面径 | 11.94㎜ |
9.60㎜ | リム径 | 12.01㎜ |
1.14㎜ | リム厚 | 1.27㎜ |
44.70㎜ | 薬莢長 | 51.18㎜ |
57.40㎜ | 全長 | 69.85㎜ |
490g | マガジン重量 | 750g |
写真や重量を見て分かるように5.56㎜弾と7.62㎜弾とではサイズが倍ぐらいちがう。サイズがでかいという事はそれだけ、火薬の量が多いという事になり、7.62㎜弾の方が威力は高い。有効射程でいうと銃や銃身(バレル)の長さによっても変わるが、5.56㎜弾で300~500m、7.62㎜弾で400~600mと7.62㎜弾の方が100mほど長い。
威力が高い7.62㎜弾であったが、徐々に前線の主力小銃は5.56㎜弾に取って代わってしまう。それはなぜなのか。
なぜ、5.56㎜弾に切り替わった?
7.62㎜弾はその大きさと威力が仇となっていた。重量に関していえば200発の弾丸を所持した場合、5.56㎜弾は計2.4㎏だが7.62㎜弾は計5㎏と倍になる。これにマガジンの重量も追加される。更に7.62㎜弾はサイズもデカい。荷物としてもかさばり、歩兵の機動性を落とすことになる。
威力がデカいことはその分、反動が大きいという事になり、連射、速射時は反動により次弾の精度が落ちていた。銃の小型化、軽量化が進むとその反動が吸収しきれなくなる。
そこで、米軍はより小型で且つ、反動を抑えながら500ヤード(450m)の距離で超音速で維持し、ヘルメットを貫通できる弾丸を求めた。そこで開発されたのが5.56×45㎜ NATO弾になる。これは、課題と要望を全て解決する弾丸だった。
射程と威力は7.62㎜弾より下がったが、そもそも歩兵の銃撃戦の交戦距離というのは100~200mの範囲以下がほとんどになるので、射程が短くなるのはそこまで影響がなかった。
では、7.62㎜弾が必要ないかといわれるとそういう訳ではなく、7.62㎜弾の威力と射程は戦場においてまだまだ有効だ。その特徴を活かして後方からの支援火器の弾丸として、機関銃やマークスマンライフル、スナイパーライフルに使われている。機関銃は銃本体が重いため連射時でも反動を制御できるのと、正確な射撃というよりは圧倒的な火力による制圧射撃がメインだ。マークスマン・スナイパーライフルにおいては射撃は単発なので反動の影響もない。歩兵部隊の中でも分業化が進む中で7.62㎜弾に別の役割が与えられた。PUBGや荒野行動などのゲームにおいては重量などの制約もないので、より強力な銃を求めて7.62㎜弾仕様の銃を使う人も多い。