アメリカ空軍の対ドローン兵器「THOR」

アメリカ空軍の対ドローン兵器「THOR」
Photo US APhoto US Air force

アメリカ空軍研究所(AFRL)が開発した 「THOR(トール)」 は、複数のドローンを一瞬のうちに無効化することができるドローンキラー・UASカウンターです。現在、これに続く「Mjolnir(ミニョル)」という名のシステムも開発中です。「THOR」は北欧神話の神トールの名であり、「Mjolnir」はトールが持つハンマーの名前です。

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既存の防空システムではドローンの集団攻撃に対応しきれない

エンド・オブ・ステイツ

戦闘機、爆撃機、ミサイル、ロケット弾と空の脅威は様々ですが、現在、最も脅威と考えられているのがドローンによる攻撃です。ドローンは安価で開発も簡単で、民間用に売られているドローンでも爆弾を搭載すれば自爆ドローンへと簡単に兵器化でき、武装組織やテロリストでも精密誘導兵器を数多く手に入れることができます。そのような状況の中、脅威とされてるのが数十機のドローンからなる集団戦法「スウォーム攻撃」です。戦闘機やミサイル、ロケット弾よりも速度が遅い、ドローンを撃墜することはそう難しくありませんが、それが数十機となると話は別です。例えば軍事基地に設置されている対空ミサイルなどは一基あたり多くても6~8発なのでそれ以上の数のドローン攻撃を受けたら対処できません。機銃のCRAMやCIWSは毎分4000発の火力で撃墜しますが、多数のドローン相手では直ぐに弾を撃ち尽くしてしまいます。スウォーム攻撃は、数十機によるドローンの一斉攻撃によって、対空システムが対処しきれなかった穴を生き残ったドローンで攻撃してきます。

ドローンキラー「THOR」

これらの脅威に対抗するためにアメリカ空軍が開発したのが「THOR」です。1500万ドルをかけて開発されたTHORはドローンの群れといった複数のターゲットに対抗するために特別に設計された兵器でドローンの電子機器を無効化する指向性エネルギー兵器のプロトタイプです。空からの脅威を検出すると、THORに備え付けられたアンテナから高出力のマイクロ波を放出します。このマイクロ波を受けたドローンは内部の電子回路が瞬時にショートし、行動不能に陥り、無効化されます。マイクロ波はミサイルや弾丸に比べてエンゲージメント面積が広いため標的を撃ち漏らさず、複数のドローンを同時に捉えることができます。電力が続く限り使用でき、ミサイルのように弾数を気にする必要がありません。そして何より一発数億円もするミサイルを使用せずに済み、コストを大幅に削減できます。THORは発射音もせず、静かに一秒以内でドローンを無効化できます。

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THORの大きな利点はポータブルUASカウンターシステムであることです。C-130輸送機で輸送可能な全長6mのコンテナに収まり、トラックへの積載も可能、世界中どこへでも展開できます。2人で組立が可能で、システムは3時間以内にセットアップでき、最小限のトレーニングで運用できるよう設計されたユーザーインターフェイスを備えています。

次期ドローンキラー「Mjolnir」

2019年からテストが始まったTHORは既に2年間のテストを終え、評価は非常に良好です。AFRLはテストで学んだTHORのテクノロジーの利点と改善点を受け、次期ドローンキラー・UASカウンター 「Mjolnir(ミニョル)」の開発に着手しています。ミニョルのプロトタイプはTHORと同じ技術を使用しますが、機能、信頼性、製造準備に重要な進歩をもたらします。ミニョルが上手くいけば量産に着手し、米軍の多くの基地へ配備、同盟国、パートナーへの提供が予定されています。

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https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/2658386/afrls-thor-hammers-drones-in-new-video-animation/
https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/2713908/afrls-drone-killer-thor-will-welcome-new-drone-hammer/

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