ロンドンのバッキンガム宮殿やロンドン塔にいる赤い制服を着た兵隊。いわゆる「近衛兵」と言われる兵隊たち。彼らは直立不動で身動きせずに警護を行っています。 ロンドンに行ったことない人でもテレビなどで見たことあるかと思います。 彼らは観光地の警備員というわけではなく、イギリス陸軍近衛師団 (Guards Division)に属する歴としたとした兵士です。彼らの特徴はなんといってもあの長くて大きな黒い帽子です。なぜ、あんな大きな帽子をかぶっているんでしょうか?
イギリス陸軍近衛師団と近衛兵とは?
イギリス陸軍近衛師団と隷下の近衛兵は君主を警護する君主直下の兵士、軍団です。イギリスの君主とはチャールズ国王(故エリザベス女王)になり、ウィリアムス皇太子らも含むイギリス王室を警護するための兵隊たちになり、特徴的な黒い帽子を被った歩兵の他にも煌びやかな鉄兜を被っていた騎馬兵も近衛兵になります。 衛兵任務が主ですが、彼らは立派な軍人であり、他の陸軍兵と同じ装備が支給され、有事の際は実戦任務もこなします。2年毎に交代になるため、配属後ずっと衛兵任務というわけではありません。日本にも戦時中までは陸軍に天皇と皇居を護る近衛師団が存在していましたが、終戦後の軍の解体と共に無くなっています。
なぜ、あんな大きい帽子をかぶっている?
この帽子は「ベアスキン」と呼ばれ、その名の通り、熊(ベア)の毛皮でできています。そもそもはイギリスの1つをなすスコットランド兵の民族軍装なり、防寒のために着用されていました。この帽子はその後、フランス軍でも採用されます。
下はナポレオン時代のフランス軍近衛兵の絵です。
19世紀のヨーロッパはナポレオンの元、フランスが勢力を急拡大していました。いわゆるナポレオン戦争の時代です。当時の戦術は兵が横一列になって銃を撃ち合い、白兵戦を行う、戦列歩兵という戦術が主流でした。今の戦争とは違い、身を隠すということはしませんでした。むしろ如何に自軍を大きく見せるかが重要で、フランス軍は背が高いベアスキンを歩兵に着用させることで、兵に威厳を与え大きく見せることで敵軍には威圧感を与えていたとされています。
[adcode]1700~1800年代のアメリカの独立戦争や南北戦争の映画を見たことありますか?あの時代の戦争映画見ていつも疑問に思っていたのが、弾丸や大砲が飛び交うなかを伏せることもせず、身も隠さず、走りもせず、なぜ?皆[…]
1803年に始まったナポレオン戦争が終結したのが、世界史でも習う1815年の「ワーテルローの戦い」です。 イギリス軍は他のヨーロッパ諸国と連合を組み、フランス軍に対抗し、 13年に及んだ戦争を終結させました。この時、イギリス軍の兵士がフランス軍の帽子を持ち帰り、戦勝を記念してイギリス軍に採用されたといわれています。19世紀末までベアスキンは使用されていましたが、高価な上にメンテナンスの煩わしさ、機動性の悪さもあり兵の間では評判はあまりよくありませんでした。しかし、印象的で威厳ある姿は儀式的な場では好まれます。その後、銃の発展、戦争の戦術の変更に伴い、1900年代には戦場では使用されなくなります。1914年の第一次世界大戦が始まる頃にはベアスキンは警備隊、儀じょう隊が被るのみとなりました。イギリスの他にもイギリス連邦のオースラリア、カナダ、スリランカ。ヨーロッパのデンマーク、イタリア、スウェーデン、ベルギー、オランダ。アジアでは意外にもタイが衛兵にベアスキンを採用しています。
毛皮はカナダ産
毛皮はカナダ産になり、カナダ政府が管理する団体から熊の毛皮を入手しているそうです。最近の動物愛護の風潮からも代替えの素材を検討していたらしいのですが、耐久性などの問題もあり、現在でも継続して熊の毛皮を使っています。ちなみにお値段は10万円前後だそうです。イギリス王室をまもる権威を考えれば決して高くはないかもしれません。帽子の高さは約45㎝、重さは約660gと見た目よりは重くなさそうです。
ロンドン行ったら近衛兵を見に行こう
ロンドンの観光名所、「バッキングガム宮殿」「ロンドン塔」など観光名所となるところには衛兵がところどころに立ってるので見つけることは簡単です。バッキンガム宮殿で行われる衛兵の行進は壮観です。
ロンドン塔など場所によっては衛兵をまじか見れる場所があります。でも、くれぐれも帽子に触ったりしないように! 触るとこんなことになります。
衛兵といったら皆さんは黒くて大きい帽子を被り、赤い制服着たイギリス・ロンドンの近衛兵を思い浮かべる人が多いと思います。しかし、衛兵はイギリスだけではありません。世界各国にいます。そこで今回は世界の衛兵の写真を集めてみました。他の国[…]